第8章 Dear 神田切甘裏【幸せですかの続編】
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「っ…妊娠…ですか…?」
「はい、おめでとうございます。もう二ヶ月になりますよ」
最近、妙に体が熱っぽかったり、腹部の調子が悪く、やむを得ず近くの病院に行くと、待っていた医師からの言葉はとんでもないものだった。
妊娠…?
まさか…
ふと蘇ったのは二つの顔。
互いの求めるものが身体だと悟り別れた元恋人、ユウ。
そして、ユウと別れる原因となった白髪のアレン。
私は二ヶ月前まで、ある事件でアレン君と身体を重ねてしまった。その事で悩み、感情をユウにぶつけて傷付けて…
最後には別れる事となった…
忘れかけようとしていた出来事を、再び鮮明に浮かび上がらせた。
(アレン君…違う、彼は初め以降、膣中に出す事はしなかった)
じゃあ、やはりこのお腹の中の命は……
「ユウ…」
間違いない
けど、どうしよう…
「どうされました?気分が悪くなりましたか?」
「あ、いえ…何でもないです…」
母子手帳をもらい、私は病院を後にした。
堕ろすわけにはいかないわ…
せっかく宿ってくれた命だもの。
かと言ってひとりでは育てられない…
「ハア…」
いっそ教団に戻ってユウに話してしまおうか…
けれど、一度別れた相手にそんな事言われたって、困るかな…
日本の春によく咲くらしい美しい花、桜はもうすぐ花開く。
この桜が開けばきっととても美しくなるこの道を、私は呆然と歩いている。
「あら、あなた…」
前方から聞いた事のある声がした。
「え…?」
「…ちゃん?」
50~60代前後の初老の女性。
鉄のように硬い表情をしているが、
実はとても心優しい―――黒の教団の
「婦長…?」