第32章 ep6 繋心のワルツ
沢山の拍手が屋敷を包み込む。
「メリークリスマス。今夜は俺の息子のバースデーパーティーに参加してくれた事を感謝する」
ざわついた会場にクロスの声が響き渡った。
「そしてそこのお嬢さん、“天使の舞”をありがとうな」
のダンスをそう例えてクロスは微笑んだ。
彼の隣には、先程手洗い場で逢った美女の姿があった。
「ア、アニタさん…!?」
彼女もの姿を捕らえると、柔らかく微笑んで手を振った。
「あいつの愛人だ」
隣にいたユウが口を開いた。
「あ、愛人…っ?」
その言葉に目を丸くする。
「噂じゃ首都のヴィクトリア女王の娘まで愛人の一人らしい」
は唖然として言葉を失った。
「男としては最低な奴だな」
「言うじゃねぇか、ぱっつん」
クロスは声に出して笑う。
逆にユウは眉間にシワを寄せて彼を睨みつけた。
「お前もいっちょ前の男になったら、幾人の恋人の有り難みもわかるだろうよ」
「悪いがこれから先、こいつ以外と寝るつもりはねぇな」
「ユ、ユウっ!?」
ユウの言葉に、は顔を真っ赤にする。
そんな少女の腰に手を回すユウ。の小さな身体がびくりと跳ねた。
「ほーう。そいつは楽しみだな」
そう言って煙草を蒸すクロス。
と、その時…
「…?」
「え?」
ふと、自分を呼ぶ声。
はその声がした方を振り返った。
どこかで、聞いた事のある…
懐かしい声に…
「……っ!?」
息が詰まる。
目を見開くの名を、ユウは呼んだ。
けれど当の本人にはその声は届いていなかった。
ただ、これ以上ない驚愕の顔をして…振り向いた先の人物を見つめていた。
月夜に輝く、銀色の髪の少年に。
「ったく…やっと来たな。
―――紹介する。俺の息子の」
「アレン…君…っ」
クロスの言葉を遮り、の声はよく透った。
「…」
ユウは見た。
翡翠と銀の瞳が、絡み合うのを。
「……………」
、お前は…