• テキストサイズ

songs(R18)

第32章 ep6 繋心のワルツ





―――…


「ハァ…ハァ…ッ」

息を切らし、やっと屋敷まで戻ってきた。

髪や飾りは汗と一緒にぐしゃぐしゃになり、帰路につく貴族達の視線が集まるが、は気にも止めなかった。


入り口の白い階段にて、会場の華やかな景色を後ろに従えた人物が立っていた。



いつものように高い位置でコバルトブルーの髪を束ね、何処か不機嫌そうに自分を見下ろしていた。

「ユウ…っ」

今すぐにでも彼に駆け寄りたいのだが、先程のラビの言葉を思い出す。


“ユウは…に、特別になってほしいんさ”


その言葉の意味を、再理解して頬を赤く染めた。
そしてその顔を見られたくなくて、その場に立ち尽くし、俯いてしまった。



「……っ…」

暫くすると、彼がいつもする、舌打ちが聞こえた。
は反射的に顔を上げた。

「俺の側から離れるな…さっきそう言ったばっかじゃねぇか…お前は」

呆れたような口調で、ユウは口を開いた。

「ご、ごめんなさい…」

つかつかと階段を降りてくるユウ。

「その言葉の意味…ちゃんとわかってんだろうな?」

気が付けば、彼と自分の距離は急速に縮められていて、は咄嗟に身じろぐ。

けれど素早くユウの腕が腰に回り、顎に手を添えられた。

「……っ!」

彼の美しい顔が目の前にあって、は息をすることも忘れていた。


そんな彼女の様子を見て、ユウは微笑んだ。
そして耳元で囁く。



「踊るか?」

「え?」

やっとの事で彼を見上げた。

「俺と、最後の一曲」

「で、でも私…ダンスなんて…」


本当は、

本当は貴方と踊りたいけれど…


するとユウは、の手を取り、優しく握った。


「俺が、エスコートしてやる」


/ 412ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp