第32章 ep6 繋心のワルツ
「なんで特別じゃないって、決め付けるんさ?」
は涙に濡れた顔を上げた。
でもまたすぐに地面を見つめる。
「……っ…」
脳裏に、彼の隣にいた淑女が過ぎる。
きっと…きっとユウはあの人が…
「最初に言っとくけど、さっきの子はユウの恋人じゃないさ?」
「………?」
「リナリー・リー。ユウの従姉妹さ」
「…え…?」
のほうけた表情に、ラビは柔らかく微笑んだ。
「詳しく言うと、ユウの亡くなった母上の妹の娘。とは同い年だと思うさ」
「ユウの、従姉妹…?」
「ちっちぇ頃はよく一緒にいたらしいけど、ユウはあんまり意識した事はないらしいさ」
あんなに綺麗なのに…
「じゃあ…あのダンスは…」
「社交ダンスみたいなモンさ。あの曲は、華やかな音色で、社交用だったから好きな相手以外と踊ってもいいんさ」
「………」
自分の勘違い…
けれどまだ浮かない顔のに、またしてもラビは言った。
「ユウは変われたんさ、のおかげで。
…人間本来の優しさとか、たまに見る笑顔とか…全部が来てから見れるようになった」
目をつむり、思い出すように話すラビ。
使用人として、ずっとユウを見てきたラビがそう言うのだったら、事実なのだろう…
けれど、
「私は何も…使用人として、ただ側にいただけ…」
ぽんっとの頭にラビは優しく手を置いた。
「それ、さ。ユウを変えたんは」
顔を上げると、ラビは先程と同じ、優しい独眼でを見下ろしていた。
「が側にいてくれたから…ユウは、人の温かさを知ったんだと思うさ。
俺は今まで、ユウと一緒にいるだけで、何も進歩しなかった。
けどお前は、いつもユウの為に動いてたさ」
ユウの好きな色を予想して、花を挿したり…
ユウの熱を下げようと、屋敷ん中を夢中で 走り回ったり…
「ロードに嘘つかれて、ずっとチェシャー探してた時も、ユウを悲しませたくないからだったんだろ…?」
は頷いた。
ラビはにっこりと笑んだ。
「そんだけしてたら、ユウも変わってくさ。
自分は一人じゃないって、思うようになったんさ」