第1章 三日月 神田 切甘裏
ーーー・・・
バンッ
「おや?」
「…?」
話し合いの最中だったのか、神田とコムイはソファーに向かいあったまま首だけをやってきたに向けた。
「神田、どういうこと!私長期任務なんて知らないわよ!」
怒りに拳を握りしめ、つかつかと神田に歩み寄った。
「忘れてた」
「嘘つき!神田がそんな大事な事、忘れるわけないじゃない!」
怒りをあらわにしたを神田は睨んだ。
「ちゃん落ち着いて。実はその長期任務、最初はちゃんに行ってもらう予定だったんだけど、神田君がどうしても行きたいと申し出たからね、神田君にお願いしたんだよ」
コムイが弁解しようと割って入った。
「どうして引き受けたの?」
は神田に向き直って尋ねた。
「お前じゃ手に負えないとわかってるからだ」
「私だと、力不足だって言うの!?」
「そうだ」
神田は視線を反らして言った。
「なっ!」
「今は一人でもエクソシストが欠けたらやばいんだよ。そんな事もわかんねえのか」
いつもの淡々とした態度に無性に腹が立った。
「っ…!」
気付けばは神田の頬を打っていた。
涙が頬を伝う。
「ユウの馬鹿!大嫌い!」
泣きながらそう叫び、は司令室を出て行った。
足音が聞こえなくなると、コムイはやれやれと息を漏らした。
「君も素直じゃないよね」
「チッ…ほっとけ」
「謝っといで…2ヶ月も会えなくなるんだから」
「────悪い」
神田は席を立ち司令室を後にした。
「君達は意地っ張りだから…
お互いがどれだけ大切に思ってるのかが、わからないんだね・・・」