第1章 三日月 神田 切甘裏
全然わかってなかった
アイツはただの冷血な毒舌男だ
少しでもアイツの幼なじみという事を喜んでいた自分が馬鹿に思えた。
あの後、は自室に篭りベットの上で身を丸めて泣いていた。
(ユウよりは弱いのはわかってる…だけどあんな言い方…)
悲しくて涙が止まらない。
コンコン…ガチャ…
部屋のドアをノックし、開ける音。
ブーツの足音が近づいて来る。
「鍵は掛けとけ、危ないだろ」
予想通りの人物がそこにいた。
「出てって…」
神田を見ようとはせず、は言った。
「…話を」
「ユウなんか大嫌い!」
泣き腫らした顔を上げては神田を睨んだ。
「私はユウの何…?私はユウが大切だから、ユウを危ない目に合わせたくないのに…」
「…」
「私はユウよりは劣るよ。そんなのわかってる。でも、仲間なんだよ…?仲間を信じてくれたっていいじゃない!」
「っ!」
神田はベッドに乗り上げ、を抱きしめた。
「嫌っ離して!」
神田の腕の中では暴れる。
「ユウなんか大嫌い!」
「・・・俺は、好きだ」
静かな声で、神田は言った。
驚いては抵抗するのを止めた。
神田はそんな彼女を一層強く抱きしめた。
「お前が好きだ…」
「好きだったらなんで信じてくれないのよぉ…」
泣きながらは言った。
「お前が大切だから、危険な目に合わせたくなかった…だから長期任務は俺が受けた」
「え…?」
は顔を上げて目を丸くした。
「大切なものだからこそ…それを命懸けで守りたいんだ」
「ユウ…」
「例えお前に嫌われようと、俺は引かない」
ああ、私、ユウの事ちゃんとわかってた。
照れ屋だけど優しい…
ユウはちゃんと、私を守ろうとしてくれてたんだね…
そう思うと、また涙が溢れた。
「ごめん…ごめんね、ユウ
嫌いだなんて嘘だよ…」
「わかってるから、泣くな…」
神田は指の先での涙を拭う。