第31章 ep5 君の特別
「前より、表情が良くなったじゃねぇか」
変わったな、と言うクロスにユウはニヤリと口端を釣り上げた。
「何故だと思う?」
「答えはわかるが、今は黙っててやる。ま、立派になったって褒めてやるよ」
頭を撫でようと、伸ばした手はユウによって簡単に払われた。
「そういう所は、いつになっても変わらんな」
と、苦笑いを浮かべるクロス。
そんな彼に、ユウはポケットから何かを取り出し、投げ渡した。
「アンタの養子に、ハッピーバースデーとメリークリスマスだ」
「あいつはもう15なんだがな」
クロスはそれを受け取り、踵を返した。
今回のパーティーは、クロスの養子のバースデーパーティーなのだ。まだ顔は見ていないが、自分と歳が近いらしいので好奇心が湧いた。
(クリスマスが誕生日って…)
あの子も今日が誕生日だったな…
「何をあげたの…?」
そうユウに尋ねた。
ユウはを向き、
「忘れた」
そう答えた。
「わ、忘れたって…」
は苦笑いを浮かべた。
「あ、いたいた!探したんさ~っ」
そこに、オードブルに様々な料理を乗せてきたラビが現れた。
「ふって見たら後ろにいねぇから、いらん虫にさらわれたと思ったさ~」
よかった~と、を抱きしめるラビ。
ユウは無言でラビを睨みつけた。
「虫にちょっかいはかけられてたがな…」
「ま、まじさ!?っ」
ラビは独眼を見開いた。
「う、うん…でもね、ラビ。助けてもらったの…ユウ…に」
「何でそんな歯切れ悪ぃんだよ」
すかさずユウの言葉が突き刺さる。
(だって…やっぱり、呼び捨てってまだ慣れない…)
でも彼は、自分を助けてくれた。あの時の彼の横顔が、頭を放れない。
「ま、無事で何よりさ~」
ラビはようやく、を離した。
「うん…二人とも、ありがとう」
は赤と青、双方を見て微笑んだ。
途端に、二人が顔を背けるのに、は首を傾げた。
「あ、私、お手洗いに行ってくるわ」
そう言って二人の元から去っていく。
「変な虫には気を付けるさ!」
彼女の白くて小さな背中に向かって叫んだ。
すると、
「ユウ…?」
聞き覚えのある、女性の声。
「…リナリー?」
ユウは振り返った。