第31章 ep5 君の特別
「レディ助けるたぁ、いい男になったじゃねぇか」
背後から、男の声がした。
ユウの顔が、普段の気怠そうな顔になった。
ユウはくるりと向きを変え、声の主を見据えた。
目が覚めるような紅い髪。
の紅よりは少し薄い、ラビの赤よりは少し濃い色。
大人の男、そう言える歳であり、煙草を優雅に蒸している。
「久しぶりだな」
「まさかお前が来るとは思わなかった。てっきりあの芸術男が来るんだと思った」
ユウの口調が変わった。
普段の話し方に近い。
ユウと、この紅髪の男は面識があるらしい。
それと、周りの貴族達が彼を見てざわついているので、彼も名の知れた貴族なのだろう。
(当たり前だけど…貴族ばかりね…)
は二人の男を見上げる。
「そっちの嬢ちゃんはお前の連れか?」
男はを見下ろし尋ねた。
「はじめまして。・ピュアリスと言います。貴方は?」
男の視線に恥じらいながら、は頭を下げた。
「…だったらなんだ?」
何故か不機嫌なユウは男を睨み付けた。
けれど男はそれを無視して興味ありげにを見つめる。
「俺の名はクロス・マリアン。このパーティーの主催者だ、お嬢さん」
「マ、マリアン伯爵ですか?失礼しましたっ」
は慌てて頭を何度も下げる。
「いや、いいぜ。お前、こいつの使用人か?」
クロスは射抜くような瞳でを見た。
「はい…ユウの、専属メイドです」
ちらりとユウを盗み見ると、彼は鋭くクロスを見据えていた。
それを聞いたクロスは、ニヤリと口端を釣り上げ、ユウを向いた。
「お前も隅におけねぇな」
「悪いかよ…テメェに言われる筋合いもねぇな」
反抗的に、ユウはクロスに言葉を放った。
けれどクロスは笑みを浮かべたまま、ユウとを交互に見た。
「いや、お前がこんなちっちぇー頃から知ってる俺にとっちゃ、嬉しい発見だ」
さっきより、どこか優しい瞳の色のクロス。