第31章 ep5 君の特別
「なーにニヤついてんだ、アンタ?」
前方から声が聞こえ、顔を上げると、そこには奇抜なスタイルの少年が立っていた。
嫌々着ているようなスーツは思う存分、着崩されていて、男だが目や頬にメイクが施されている。
よりも1、2年上だが、身長はあまり高くはない。
けれど150にも満たないにとっては十分高く見える。
「え…?」
「てゆーかアンタ、何気に可愛い顔してんな」
「あ、貴方は…?」
初対面の異性に話し掛けられ、戸惑う。
見るからに怖そうな容姿に、びくびくしながら言った。
「俺?デビット・ミレニアムっつーんだ、覚えとけよ」
「は、はい…」
「俺さ、今もうひとりの兄弟探してんの」
そう言ってデビットは辺りを見渡す。
「お、弟さんですか?」
「双子。全然似てねぇけど」
と言うことは二卵性双生児か、とは思った。
顔が全く似ていない双子を捜すのは、初対面の自分には不可能に近かった。
「ま、いいや。本気出せば銃鳴らして呼び付けるし」
「じ、銃…?」
なんて事を言うのだろう、この少年は。
と言うより、さっきから距離が詰め寄られている気がしている。
「ちょ…あの…」
「香水くせぇ婦人らよりも、いい匂いがするな」
腰に手を回し、強引に引き寄せてくる。
「やっ何…っ」
抵抗しようにも、力が強すぎて敵わない。
デビットはの耳に唇を寄せた。
「喰っちまいてぇ…」
低く、囁くような声なのに、周りに聞こえた気がしてならない。
は顔を真っ赤にして力いっぱい抵抗する。
「ったく、暴れんなよ。どうせそこらの成金貴族だろ?アンタ」
そんな彼女を弄ぶようにするデビット。