第31章 ep5 君の特別
「ラビも、同じだと思うわ」
「……?」
「ラビも、いつも笑って…私達には素顔を見せてくれない」
薄々気付いていた。
彼が、心から笑わずに笑みを浮かべている事はしょっちゅうある。
ラビは黙った。
黙ったまま、の言葉を聞いていた。
「疲れない?もっと…素の貴方を出してほしいわ」
はそっと、ラビの頬に触れた。
ラビは目を見開いて、を見つめていた。
そして暫くすると、無表情での手を掴んだ。
「…ラビ?」
「なーに言ってるんさっ俺はいつも楽しいから笑ってるんさ~」
そう言って満面の笑みを見せるラビ。
「え…?」
思わぬ彼の態度に、は混乱する。
そんな彼女の頭を、ラビは優しく撫でる。
「ま、心配してくれて…ありがとさ。まじ元気だから」
そう言ったラビの表情に、影があったのを見つけたが、彼が頑なに暴かれるのを拒んでいる気がしたので、気付かないフリをした。
「う、うん…」
「さ。何か食いに行くさ?美味いもんいっぱいあるさ~」
そう言って再び中へ入っていくラビ。
は慌てて後を追った。
ちらりとユウを見遣ると、彼は確かに、不似合いな笑みを浮かべていた。
ロードの次に花をまた挿してくれと言われた時…
(私に微笑んでくれた時は…あんなのじゃなかった…)
もっと優しくて、もっと安心できるような…
そんな微笑み…
自分には、見せてくれた笑顔。
それが本当の笑みなら…
(少しくらい、期待してもいいのかな…?)
専属メイドという地位が与えられた事も…
貴方の特別になれたという事と思って…