第31章 ep5 君の特別
「あ、ありがとう…ラビ」
「どう致しましてさ。それにしても、予想はしてたけど…すげえさぁ…」
ちらりと、ラビは貴族達に囲まれるユウを見た。
「本当…貴族の中でもあんなに堂々としてて…」
正直、憧れる。
自分なんて、此処に足を踏み入れた時から俯いていて…
「ま、俺らと違ってユウは貴族だからな」
「ラ、ラビだって貴族じゃない」
「今はユウの専属執事さ~♪」
そう言って執事のジャケットを翻すラビ。
ユウにこき使われながらも、結構この職には愛着があるらしい。
「ま、でも…あれはユウの素顔じゃねぇけどさ」
「…?どういう事…?」
見てみ、とラビは親指を立ててユウを指した。
彼は今だに貴族の男女に囲まれ、口々の質問に顔色一つ変えずに答えていた。
「ユウの奴、玩具みたいな笑顔さぁ」
彼に似合わない、高く口端の上がった、貴族の微笑み。
周りは気付いていないが、ラビいわく、間違いなくあれは“営業スマイル”らしい。
「ユウは、めったに笑わないのがユウなんさ。あんなへらへらして…心隠してるんさ」
ラビの言葉に、は彼を見上げた。