第31章 ep5 君の特別
―――…
「や、夜会…?」
「今回、ナイトパーティーの主催者はクロス…クロス・マリアン伯爵だ」
「げ…あのマリアン伯爵かよ…」
ユウの話を聞くと、ラビはあからさまに引き攣った様子で言った。
そんな彼に、は尋ねた。
「マリアン伯爵って…?」
「上流階級の貴族ん中でも、一目置かれてる奴さ。
酒と女には目がない、そんでもって野郎には残虐非道なオッサンさあ」
そう話すラビの表情はみるみる曇っていき、その伯爵の事を善くは思っていないようだ。
「そのマリアンって伯爵はしょっちゅうパーティー開くんさ。
いつもだったらフロワ伯爵が行くんだけどさ」
言いながらラビはちらりと、腕と脚を組み眉間にシワを寄せるユウを見た。
「フロワ伯爵は不在なのよね?」
「そ。だからユウが行かなきゃいけないんさ。なあ、ユウ?」
ニヤリと口端を釣り上げるラビに、ユウはおもいっきり舌打ちをする。
「…そのパーティーにはお前達にもついて来てもらう」
「私達も…?」
はラビと顔を見合わせた。
「何さ~?やっぱユウもひとりじゃ淋しいんさ?」
ニヤニヤと笑みを浮かべるラビ。そんな彼を、ユウは切れ長の瞳で思いきり睨み付ける。
「馬鹿…パーティーには従者を付けるのが常識だろうが。今回はメイド長謙、使用人長のババアが故郷に帰ったから、代人として連れて行くだけだ」
再び舌打ちをして、顔を背けるユウ。
とラビは、お互いの顔を見合った。
(つまり従者代表って事よね…)
だが、ラビは執事として付いて行くのは良いだろうが…
「私も…いいの…?」
自分は、ただの使用人なのに…
ちらりと、ユウがこちらを向いた。
見つめられるのが恥ずかしくて、つい俯きがちになってしまう。