第31章 ep5 君の特別
「まったく…いっつもどっか抜けてるんさ…は」
「ご、ごめん…」
は申し訳なさそうに俯いた。
(別に怒っちゃいないんだけどさぁ…)
でも、今、彼女と二人きりでいる事に、柄にもなく緊張していた。
初めて逢った時からそうだ…
自分は、ずっとこの少女を見ていた。
自分より幾分か下のこの娘は、人よりも愛らしい顔立ちで、人よりも不思議な雰囲気を醸し出している
自分は…そんな不思議な空気を纏う少女に、惹かれているのだ…
(せっかく専属メイドになったのに…勿体ないさ)
勿体ない、というのは彼女が、専属使用人としての肩書など関係なく、他の使用人達に普段のように接しているからである。
彼女達がに頭を下げると、逆にまでへこへこと頭を下げているのだ。
まったく…飾らない奴め。
だが、そんな彼女にも惹かれている自分がいた。
いっそ、彼女をこの腕にしまい込んでしまおうか。
「ラビ?どうかした?」
顔を上げ、こちらを覗き込む。
「な、何でもないさ!」
ラビは両手を振り、ごまかすように視線をそらす。
不思議そうに、翡翠の瞳がこちらを見つめている。
「さ、早くユウん所行くさ~」
にっこりと独眼が微笑み、促すようにの背中を押した。
「う、うん…」
はまだ、腑に落ちない様子で首を傾げている。
(ラビって…隠し事多いよね…)