第30章 ep4 皆が変わる日
ガチャ…
「おい馬鹿兎、てめぇあの書類何処にやった…」
仕事中なのか、眉間にシワを刻んだユウがノックもせずに押し入って来た。
というより、此処は元々彼の部屋なのだから、彼がどうしようが関係はない。
「ああ、それならここにあるさ」
と、内ポケットから四つ折にされた紙を取り出すラビ。
「なんでそんな所に入れてやがるっ!」
そんな彼の赤髪を引っ張るユウ。
「痛いっ痛いさユウ~」
涙目で訴えるラビと、それに動じないユウ。
端からその様子を見ているはただただ笑っていた。
「ちっ…こいつが起きたんだ、早く仕事に戻れ」
四つ折の紙を奪い取り、ユウは言った。
「えぇえ~?さっき来たばっかさあ…」
ラビは唇を尖らせた。
「起きるまで、の約束だ。 これ以上病人に構うな、馬鹿」
無情に、ユウは吐き捨てた。
「でもさ~ユウ。だって此処でひとりで寝てたら暇さぁ…」
「わ、私は…別に…っ」
に否定されると、心底悲しそうに眉を寄せるラビ。
まったく…ころころと表情が変わるやつだ…
ユウはため息をついた。
「なら俺は此処で仕事をする」
「ええっ!?今なんて言ったさ?」
「んだよ、俺がこいつの面倒をみてやるって言ってんだよ…」
そう言って、四つ折の紙とは別の、数枚の紙をラビの額に押し付ける。
「ふぐっ」
「今日中に、その資料を調べてまとめとけ」
「う、うへ~」
びっしりと紙いっぱいに並べられた文字。
それを見るなり、ラビは悲しそうに目を細めた。
「き、今日中さ…?」
「できなかったら、今度の稽古の的にする」
そう言うユウの目は、冗談など一切映していなかった。
「ユ、ユウの鬼ぃ!!」
独眼を潤ませながら、ラビは部屋を飛び出していった。