第30章 ep4 皆が変わる日
―――…
ぼんやりした意識の中でも、確かに感じた。
誰かの温かさ…
逞しい腕に抱かれて…
「…んっ……」
前触れなく、が目を覚ますと、そこは見慣れない天井が広がっていた。
「…あ…れ…?」
いつものベッドよりも、柔らかい気がする。
は身体を起こした。
だが、
直ぐに力無く、また仰向けに寝る事になってしまった。
辺りを見渡すと、そこは何処か見覚えのある造りで、は内心首を傾げた。
(私…どうして…)
「ミャーォ!」
すると、小さな鳴き声と共に腹部に毛布を挟んで重みを感じた。
「…チェシャー?」
その雄猫は嬉しそうに喉を鳴らした。
(よかった…ちゃんと見つかったのね…)
実際の所、彼を見つけた直前後の記憶はないが…
こうして健康な姿が見れれば、あの時の寒さも…
「起きたか?」
「ユ、ユウ様…っ?ど、どうして此処に…?」
入ってきた意外な人物に、は目を見開いた。
ユウはいつものように、美しい青髪を高い位置で束ねて…
(あれ…?…今日はスーツじゃない…?)
彼の私服姿はめったに拝めない。スーツに身を包まず、低い位置で髪を束ねたユウは、何処か新鮮味がある。
「…此処は俺の寝室だ」
「えっ!?」
は慌てて身体を起こした。
だが、身体が思うように動かず、もがき回る。
「シーツが歪む…大人しくしていろ」
呆れた様子でユウはを見下ろした。
ぴたりと、の動きが制止する。