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songs(R18)

第29章 ep3 貴族の事情




―――…


(此処にもいない…)

はぁ…と白い息を吐く。

(何処に行ったんだろ…)

キャベツ畑、中庭、玄関…様々な場所を回ったが、あのロシアンブルーの姿はない。

一度戻ってもう一度捜そうか、そうも考えたが、あの猫もこんな寒い中、凍えているのかもしれない…そう思うと自然と身体が庭の奥に進んでいく。

(寒いなぁ…)

きっとチェシャーも、この寒空の下にいるのだろう。

小さい身体を必死に温めようとしているのだったら、自分が早く見つけてあげねば。


「あっ!」

踏み締めた固い地面に足を滑らせ、は転倒する。

そこに容赦なく、凍てつく風と雪が降ってくる。
身体を起こしたは所々に走る痛みに顔をしかめた。

「い…っ」

昨日、ロードに誤って熱湯をかけられた手が、じんと疼く。

急いで出て来たので、大した靴も履かず、スリッパでいたので、足が、かじかみ凍りついている。

薄い服を、12月の本冬の風が容赦なく貫いていく。



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