第29章 ep3 貴族の事情
「お前の人生は…お前のもんだ。破産したっていいじゃねぇか…。自分を売るな…自由に生きろ」
無理に背伸びしなくたって…
“こんな時くらい…甘えたっていいんですよ”
「人は…思ったより優しいもんだ」
「……………」
ロードは目を伏せた。
きっと自分と同じ事を考えているのだろう…
“ユウ様…これからもひとりじゃないですよ”
「それって…の事…?」
呟くようにロードは言った。
月光の加減で、表情は読み取れないが、声色からして何か取り除かれたような、清々しさが感じられた。
「…ああ」
いつの間にか、彼女は自分にとって大切な存在になっていた。
だから…
「あいつを…を返してくれ」
ユウは真っ直ぐに、ロードを見つめた。
「……………」
「お前の所の執事がいねぇな。あいつが面倒みてんのか…?」
「うん……ごめん…」
次にロードがユウを見つめた時、その瞳は穏やかで…