第29章 ep3 貴族の事情
「ねぇ」
「やっぱり噂は本当だったんだな…」
「…?」
「キャメロット家が、経済的に破産寸前だと言う事…」
ロードはハッとして我に返った。
ユウはニヤリとして身体を起こした。
「父上は心臓病を患っていて、動けない父の代わりに娘のあんたがキャメロット家を立て直そうとしているが…」
前髪を掻き上げ、ロードを見遣る。
「俺みたいな無愛想な男の嫁になったって、何も楽しくねぇぞ」
「煩い!!」
ロードは怒鳴った。
「煩い煩い煩い煩い煩い!!」
ロードは頭を押さえて叫ぶ。
肩を震わせ、ユウを睨みつけた。
「お前に…っお前なんかに僕の何がわかるって言うんだよ!!お前みたいな裕福育ちの坊ちゃんに!!」
「………」
大きな瞳には涙を浮かべ、そして疲れも映っていた。
きっと、自分以外にも貴族の家を転々と回っていたのだろう。
けれど、
「…まだ12歳だって言うのに、自ら政略結婚を選ぶお前の気持ちを…俺がわかる筈ねぇよ…」
ユウは優しく、ロードの頭を撫でた。
「でもな、これだけは俺にもわかる」
聞け、とロードの顔を持ち上げるユウ。
「自分の人生を…そんな風に使う必要はねぇ」
「っ…!」