第29章 ep3 貴族の事情
ーーー・・・
キィ…
扉が開く音と、来訪の気配…
目を閉じていたユウは、ベッドに横たわったまま、じっと、近付く足音を聞いていた。
「………」
コツ…コツ…コツ…
ギシ…
やがて自分が寝ているキングサイズのベッドが軋む音。
それに合わせて僅かにベッドが揺れる。
ユウは静かに、眠っている事を装い続けた。
すると、
「ユウ~」
甘ったるい声、そして自分にのしかかる小さな身体。
「起きて、ユウ…起きてるんでしょ?」
耳元で囁く声。
ユウはゆっくりと目を開いた。
そこには案の定、目と鼻の先にロードの顔があった。
月明かりだけのベッドの上。
その月光がロードの姿を照らし出す。
「随分と大胆な寝衣だな…」
「夜になると口調が変わるんだねぇ~…なんかやらしーい」
女性らしさを醸し出すようなワンピースを着たロードは、ユウの唇を指でなぞる。
「あんたが来るのを待ってた」
「それって、期待しちゃってもいいの~?」
ロードは口端を釣り上げた。
珍しく、ユウも口端を上げた。
「僕ね~ひとりじゃ眠れないんだぁ~…怖い夢見ちゃうんだ~」
「………」
「今日は寒いし、このまま僕の事…抱いていてよ」
身体を起こし、ユウと視線が絡み合う。