第29章 ep3 貴族の事情
―――…
長いテーブルに向かい合い、ディナーに手を付けるユウとロード。
会話は無く、金属が噛み合う音だけが僅かに部屋に響く。
その音と、何か異様な気まずさを感じながらラビは、ミランダに耳打ちした。
「そういえば、は…?」
「ちゃん?…そういえばいないわね…」
ミランダが辺りを見回す。
他の使用人達も、首を傾げるばかり。
静かな室内なため、ユウにもその言葉は聞こえていて…
「………」
ちらりと前方で、サラダを口にしているロードを見遣る。
すると、彼女もユウの視線に気付き、無表情でこちらを見つめた。
「…失礼」
先に次の行動に移したのはユウだった。
彼は席を立ち、踵を返した。
「今日は先に休む。…寝衣の用意を」
「か、かしこまり…ました」
内心首を傾げているのだろう、ラビは慌ててユウの後をついて行った。
「……フフッ…」
ロードはニヤリと笑った。