第29章 ep3 貴族の事情
「あのね、実はキャメロット家ってね…」
「ねぇ」
三人は突然の背後からの声に、びくりと肩を震わせた。
(まさか…っ)
恐る恐る後ろを向くと…
「ユウはどこにいるのぉ~?」
深紅の薔薇を抱いた小悪魔が、口元に笑みを浮かべて、入り口に立っていた。
さっと、血の気が引いていく。
(まさか聞かれていたんじゃ…)
そうなれば、これはとてもまずい状況である。
そもそも、使用人が客人の陰口を言う事すら大罪なのだから…
「な、なんでしょうか?ロード様…」
先程まで陰口を言っていた使用人達は、ロードから目を背け、部屋を清掃する。
代わりにミランダが、ぎこちない笑みを浮かべて彼女に接待する。
「だからぁ~ユウはどこにいるのってばぁ~」
時計に目をやって、彼のスケジュールを思い出す。
「ユ、ユウ様なら、…まだ仕事部屋にいらっしゃると思いますけど…」
「そ。わかったぁ~」
そう言って、ロードは踵を返した。
ホッと、安堵の息をつく三人。
けれど、ロードは背を向けたまま、彼女達に言い放った。
「…僕がユウと結婚したら、お前らなんかみーんなクビにしちゃうから♪」
「………」
(やっぱり、聞かれていたんだわ…)
ロードの足音が去っていくと、
三人は顔を見合わせる他、なかった。