第29章 ep3 貴族の事情
「ユウ様と一晩一緒にいられたなんて…妬いてしまうわ~」
「でも、だから許せるのよね。あの子、素直で可愛いくて…本当に純粋だもの」
それはミランダも頷けた。
まだ出会って二週間しか経っていないが、彼女の良い所と言えば山ほど出て来る。
逆に悪い所など、たまにドジを踏んでしまうだけであって、それさえも他の使用人達からは愛される人気者になったのだ。
自分もいつしか、純粋に彼女に憧れを抱いていた。
(ちゃんは太陽みたいな存在だもの…)
どれだけやっても思い通りに事が進まない自分も、あの笑顔に何度も救われていた。
柔らかく、自分の長所を照らし出してくれる…
まさに彼女は太陽だった。
そんな彼女と、あの孤高の主が仲良くなってくれれば、きっと上手くいく、ミランダはそう思っていた。
「これを聞いたら、あの我が儘お嬢様も痛い目見るわよ」
「そうね。一度思い知ればいいのよ。あの方との違いを」
「ふ、二人共…それは言い過ぎじゃないかしら…」
ミランダの制止も聞かず、二人の使用人は口々にロードの陰口を叩く。
「…それに、私聞いちゃったのよね…」
「なになに?」
もう一人の使用人が目を輝かせて耳を寄せた。