第29章 ep3 貴族の事情
射抜くような視線…
なんだろう…胸をわしづかみされているような嫌な気分になるが、顔には出さなかった。
「ピュアリスです…」
「ピュアリス…昨日ちょっと気になって調べたんだけどさ」
ティキは口端を吊り上げた。
はティキの意図にやっと気付いたのか、目を見開いた。
「ピュアリスって…あの事件の」
「言わないでっ!!」
は叫ぶ。
荒げたの声に、ティキは口を閉ざす。
少女を向くと、暴かれる事を頑なに拒むように、ぎゅっと目をつむっていた。
(これじゃ、俺が虐めてるみたいじゃねぇか…)
こんな、自分よりも随分年下の少女を…
ただ質問しただけなのに…
けれど周りがふと自分達を見れば、確実に自分が悪いように見えるのだろう…
ティキは小さく息をついて、の頭に手を置いた。
「わかったよ…知らなかった事にする」
「…本当ですか?」
うっすらと涙を浮かべたは、目を丸くしてティキを見上げた。
そんな彼女を、安心させるようにティキは微笑んだ。
「ああ。…変な事言って悪かったな」
そう言ってティキは歩き出した。
「身体冷やすなよ。今日は吹雪いて来るらしいからな」
そう言い残して屋敷に戻っていくティキの背中を、は呆然と見つめていた。
無意識に、ハート型のロケットを握りしめて―――…