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songs(R18)

第29章 ep3 貴族の事情





「どうして私が止めなくちゃいけないんですか?」

「は…?」

今度はティキが小首を傾げた。

「どうしてって…あんた…」

好きなんだろ、と言おうとしたがやめておいた。
この少女の瞳は純粋すぎて、まだ自身の想いにも気付いていない様子だった。

「あんた…いくつだ?」

「え…16…ですけど…」

ティキは額に手を当ててため息をついた。


(16っていやぁ…もう一通りの事は済んでる筈だろ…)

いや、これは自分だけの傾向かもしれないが…

とにかく、このぐらいの年頃ならキスの一つや二つしてもいい筈。けれどこのという使用人は、キスどころか恋愛すらしたことないのではないか…?

「…それが…どうかしたんですか…?」

「え、ああ…いや…16にしては童顔だなって思って」

適当に流そうとしたが、童顔である事を気にしていたのか、は少し怒った様子でティキを睨み付けた。

(頼むから…そんな顔、好きな野郎にしかしないでくれ…)

女性に対しては珍しく、深い感情が芽生えてしまいそうだ。

「そういえば、ティキさん…ですよね…?」

「ん?なんだ?」

「ティキさん…どうしてさっき、ロードって呼び捨てにしたんですか?」



陰口では目上の人間でも呼び捨てにする傾向はあるが、彼の場合は彼女を憎んでいる様には思わなかった。

「もしかして…ティキさん、貴族か何かですか?」

「そ。察しがいいな」

は小さく息をついた。
脳裏に、赤毛の青年が過ぎる。

(ラビもこの人も使用人。最近は貴族の間じゃ職業体験が流行ってるの…?)

は頭を悩ませた。

「…それだけです、聞きたかったのは。ありがとうございました」

では、とは短く一礼して歩き出した。

「…待てよ、」


ティキの声には振り向く。

「ぇ…」

「あんた…ファミリーネームもっかい言ってくんね?」



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