• テキストサイズ

songs(R18)

第29章 ep3 貴族の事情





―――…


「ねぇ~ユウ、僕が作ったクッキー食べてくれた~?」

翌日、彼の仕事部屋に乗り込んできたロードは、彼の首に抱き着きながら尋ねた。

「はい。頂きました…」

書類に目を通したまま、ユウは答えた。

「美味しかったぁ?」

「ええ、甘味が少なく、食べやすかったです」

まるで機械的に答える彼に、ロードは気付く事なく嬉しそうに跳びはねる。

「でしょでしょ~♪ユウは甘いもの嫌いっぽかったから、シュガーを入れないでドライフルーツ入れたんだ」

「そうですか…ご配慮、ありがとうございます」

「“だんご”も食べた?東洋のお菓子♪あれも僕が作ったんだよぉ~」

ロードは嬉しそうに話す。
そんな彼女を見て、ラビはちらりとを向いた。

ラビの視線に気づいたのか、さっと包帯で巻かれた両手を後ろに隠した。

そして、ぎこちなく笑みを浮かべる。

ラビはを心配そうに見つめた。

は両手に火傷を負っている。
彼女は誤って沸騰したポットを倒してしまったから、と言い訳していたが、紛れも無くロードが関わっているだろう。

「大丈夫さ?」

こっそりに耳打ちする。

「うん、平気よ。それより…ユウ様が気に入ってくれてよかった…」

は何事もなかったかのように頷き返した。

「でも、めちゃくちゃさ…あの子…」

「一生懸命やってるのよ。仕方ないわ」


自分がこんな目にあったのに怒りもしない…

それは彼女がお人よしだからだろう…


そう言われると、こちらも何も言えない。

けれど

「何かあったら言うさ…」

ラビはの頭を撫でながら言った。

「ありがとう、ラビ」


は微笑んだ。



ユウの視線にも気づかずに…


/ 412ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp