第28章 ep2 深孤の優しさ
「ちゃん、おはよう。今日は少し遅いから、起こしに…」
ガチャ…と扉が開き、入ってきたミランダと目が合った。
お互い動きが制止するが、最初に動いたのはミランダだった。
「ししし失礼しました!間違えました!!」
そう言って慌てて扉を閉めていった。
ユウの部屋だと思ったのだろう。ユウは遠ざかるミランダの足音を聞きながら笑いを噛み殺した。
全く、気付かなかったが、この屋敷には面白い使用人が多い。
「ん…っ」
が身じろぎをした。
ユウは慌てて手を引っ込めた。
と同時に、翡翠色の瞳が開く。
どこかあどけなさのある顔立ち…確か、自分よりも2つ年下だったろうか?
ユウはじっとその光景を見つめていた。
「あれ…ミランダ…?」
先程の彼女の声で目を覚ましたのだろう。
は顔を上げて辺りを見回した。
次第に覚醒し始め、やっと目の前にいるユウをとらえた。
「…ユウ様…?」
「世話になったな」
「そ、そんな…もう大丈夫ですか?」
は立ち上がって、彼の言葉無しに額に触れた。
「まだ…少し熱っぽいですね…」
自分の額の温度と比べながら判断する。
するとユウはベッドから下りようと動いた。
「え…ユ、ユウ様?」
が驚いて目を見張る。
「心配するな。今日はちゃんと寝ておく。…自室に戻るだけだ」
低い位置で青髪を束ねながら、ユウは言った。
「あ…やっぱり此処じゃ、寝付けませんでしたか?」
少し淋しそうに、は俯く。
「そうじゃない」
ユウは小さく息をついて、を振り返った。
「いつまでも此処にいたら、お前に移るだろ…」
そう言って僅かに、頭を撫でた。
はその動作を呆然と受け入れ、はっと我に返る頃には、ユウは靴を履いている所だった。
は今、自分が寝衣姿だった事に気づいた。
今更ながら、羞恥に顔を赤らめる。
彼が部屋を出ると、急いで仕事衣に着替え、後を追った…