第28章 ep2 深孤の優しさ
こんな事を言われたのは初めてだった。
いつも、いつも上流貴族として恥じぬように背伸びしていた自分。
父にも、意地を張って甘える事を避けていた自分…
誰かに頼れば、いつか裏切られる
そう思って、誰にも弱い所を見せたりしなかった。
見せてはいけなかった、そう思っていたのに…
このという少女は、すんなりと自分の凍てつく世界に足を踏み入れ、笑みを称えた。
その笑顔を見ると、孤独の氷が溶けていくのを感じた。
好いてくれている…俺を…
「あ、その…好きっていうのはその…仲良くなりたいっていう事で…変な意味じゃないんです!」
先程言った事が誤解を招くと思ったのか、は慌てて弁解しようとした。
「と、とにかく…今は絶対に起きないで下さいねっ」
そう言ってネクタイを解き、ハンガーにスーツの上着を掛ける。
「わ、私…お水代えてきますっ」
じっと見つめるユウから逃れるように、はベッドから離れた。