第28章 ep2 深孤の優しさ
「どうしよう…本当に…」
は呆然と座り込んでいた。
側でティエドール邸の飼い猫:チェシャーがそのビー玉のような瞳で見つめてくる。
「…ミャー」
反省しているのだろうか。
そんな事をされても…
「、どうしたさ?」
先程の叫び声を聞き付けてラビがやって来た。
「ラビ…」
「…チェシャーが此処にいるっつー事は…なんか盗まれたさ?」
すぐに状況を理解してラビは尋ねた。
はコクンと頷いた。
「ロケット…両親から貰ったロケットペンダントを取り返そうとして…」
は立ち上がって下の池を指した。
「池に落ちたんさ?」
はまた頷いた。
「どうしよう…大切なものだったのに…」
悲しそうに目を細めるは本当に哀れを誘う。
けれどもう日は沈みかけている。
「明日一緒に探してやるさ。あの池はそんな深くないから、きっと見つかるさ」
元気づけるようにラビはの頭を撫でた。
「…うん」
はまだ心配そうに胸に手を当てている。
それほど大事なものだったのだろう。
「…さ、風邪引くから中入るさ」
そう彼女を促した。
半ば引きずられるように、は部屋の中に入った。