第28章 ep2 深孤の優しさ
「ああーっ!!」
次に、ユウが手を止めたのは夕方頃。
突発なる驚愕の声だった。
ユウは顔を上げ、バルコニーを振り向く。
もう日が沈みかけて、辺りを茜色に染め上げていた。
ぐるりと首を回すと、堅くなった肩の節がパキッと鳴る。
ユウはバルコニーへ出た。
辺りを見回すと、隣のバルコニーに一人の使用人がいた。
(あいつは…)
例のという使用人だ。
何かを落としたのか、身を乗り出して下方を見つめている。
こちらの存在には全く気づいていない様子だ。
「どうしよう…」
は力無く膝をついた。
「ミャーオ!」
彼女のすぐ側で飼い猫のチェシャーが歩き回っていた。
「………」
ユウはそれだけ見て、再び室内に戻った。
パタンと扉を閉めたまま、立ち尽くす。
チェシャーは人が身に付けている光り物が好きだ。
大方、彼女が持っていた何かを盗み、それをは取り返そうとしたが、誤って下の池に落としてしまったのだろう。
(もう日が暮れる…池の中を探すのは無理だろう…)
と、ユウは仕事に戻ろうとした
が――
“どうしよう…”
の…あの悲しげな顔を思い出す。
同時にラビの言葉も蘇る…
“あの子といれば…ユウは変われる…そんな気がするんさ…”
「………」