第28章 ep2 深孤の優しさ
「~」
「きゃっ……またラビね?」
後ろから抱き着かれ、は振り返った。
甘い香りが鼻を掠める。
「当たり~ってか疲れたさ~…ユウの稽古の付き合いは」
「稽古の付き合いじゃなくて…またちょっかいかけただけでしょ」
ラビの髪の乱れ、額の汗、そしてかすり傷を見て言った。
「まあそうなんだけどさっ。~手当てしてさ~」
「仕事増やすような事しないで。元はと言えば、ラビが悪いんでしょう?」
はするりとラビの腕から逃れると、腰に手を当てた。
そんなの様子にラビはため息をついた。
「…最近、俺の方が先輩だって忘れてないさ?」
「呼び捨て、それに敬語は使わなくていいって言ったのはラビでしょう?」
図星を突かれ、ラビは苦笑する。
が働き出して二日も経たないうちに二人はこのように親しくなった。
それはラビが、呼び捨て、そして敬語は使うなと言ったからである。
ラビは、自分にさん付け、敬語を使われるのが嫌いらしい。
この屋敷では堅苦しい関係などほしくないとの事。
もその言葉に甘えさせてもらい、今は友人のように接している。
ラビが許すなら、もう友人だろうか?
「ユウ様は何処に?」
「今、シャワー浴びてっから、もうすぐ此処に来るさ」
それを聞くと、は目を見開いた。
「こ、此処に!?…大変っ、ミランダ、早く出ないと!」
条件反射のようには残りの色鮮やかな花をかき集める。
「そんな急がんでもいいさ~」
「駄目よ!ユウ様、まだ絶対に怒ってるもの!」
は初日からユウを避けている。
それは彼と目が合う度に睨まれているような気がしているからだ。
「だから~あれはユウの目つきが悪いんさ!ユウだってもう忘れてるって!」
ラビはそう言った。