第28章 ep2 深孤の優しさ
「これ…ティエドール伯爵様の友人から贈られた花束なんだけど…
これだけの量でしょう?花瓶に挿すから、何本か抜こうと思うんだけど…どれを抜けばいいのかわからなくて…」
ミランダが両手いっぱいに抱える花束は、確かに巨大で色とりどりだった。
「そうよね…こんなに束になったら入りきらないもの…」
それに此処はあのユウの仕事部屋だ。
無口で短気の彼のカンに障るような花飾はいけない。
「ユウ様はきっと、派手な色は嫌うだろうから、白や淡いピンクだけを飾りましょう」
そう言っては馴れた手つきで派手な色合いの花だけを一本ずつ抜いていく。
その無駄の無い動作にミランダは目を見開く。
「そ、そうね…ありがとう、ちゃん。
私だけだったらどうにもならなかったわ」
純白の繊細な装飾がついた花瓶を持ってくると、ミランダは微笑んだ。
「どういたしましてっ」
も微笑み返した。
もう既に、彼女によって選び残された淡い色の花が再び束ねられていた。
「器用なのね…」
ミランダが目を見開いて呟いた。
「幼い頃は花屋さんになりたかったの。花が大好きだったから…」
手を休めず、は言った。
「ほらっ女の子って、小さい草花で冠を作るでしょう?小さい子供達によく作ってあげてたりしたから、こういうの馴れてるの」
ほらできた、と呟いてタオルで手を拭く。
満足そうに細めた視線の先には美しい花束が挿されてあった。
「凄いわ…ちゃん。私なんて、こんな才能一つもないわ」
「大丈夫よ、ミランダ。ミランダには才能だけじゃない、良い所が沢山あるわ。私だって、あとできる事は編み物くらいよ」
そう言って微笑むは、ミランダには眩しいくらい明るく見えた。