第27章 ep1 昼下がりの出会い
ーーーその時、小さな物音がした。
カリッ…カリリッ
「…ぇ……?」
ふと、音のする方へ顔を向ける。
「わぁ…」
窓の外に愛らしく座ってこちらをじっと見つめている動物。
…猫だ。
(ロシアンブルーかな?体細いし、綺麗な顔…)
ガチャ…と外へと続く扉を開けて、そっとその猫を見つめてみる。
飼い猫だろうか?
人と接触するのに馴れているようだ。
「可愛い…」
つい、
触れてみたくて手を伸ばすと…
「あっ!」
声も上げずにその細身の猫は踵を返した。
反射的にも後を追った。
美しい裏庭を、一匹の猫と使用人が駆けて行く。
猫は楽しそうに、惑わすようにどこかへと導く…
「あれ…?」
が曲がり角を曲がると、そこには猫の姿はなかった。
「猫ちゃん…?…あっ!」
屋敷の中に、入って行く。
どうしてあそこだけ開いているのだろうか…
は猫を追いかけた。
が入ったのは、当たり前だがティエドール邸の一室だった。
しかしそこに先程まで追いかけていた猫の姿はなく、恐らく廊下に通じているだろう扉の下部に猫専用の通過扉があるのを発見した。
どうやら、あそこから廊下に出たのだろう…
自分は何をしているんだろうと、我ながら思った。