第27章 ep1 昼下がりの出会い
「ストライクさぁ~!!まじタイプ!」
「え、え?」
甘い香水の匂いがする腕から逃れようと、必死にもがく。
しかし頑なに抱きすくめられて身動きすらままならない。
何故、来てすぐにこんな目に遭っているのだろうか?
それにこれは立派なセクハラになる行為だと開き直り、はラビを見上げた。
けれど当の本人はその独眼にハートを映していた。
どうやらはこの青年に好かれてしまったらしい。
だがは、自分に惚れた男の対処法を知っているほどレディではなかった。
ただただ困っていた。
そしてその戸惑いが次第に怒りへと変わり、遂にはラビを突き飛ばしてしまった。
周りから驚きの声が上がる。
「いてて…まぁそういうアクティブな所も凄い好きさ~」
すらりとした長い脚で再び前に立たれると、次は何をされるのだろうかと身構えた。
「か…可愛い名前さ。仕事でもでいいさ?」「え…あ、はい、よろしくお願いします…」
拍子抜けしたようには頷いた。
「そんな硬くならんでもいいさ。俺達は皆、自由気ままに仕事してっから!」
「ぇ…?」
「まあ主人が主人でおっとりした人だからさ、使用人ものんびりしてるんさ」
とラビは言うが、周りからは僅かに批判の声が漏れる。
それはラビだけだと。
けれど、思っていたよりも使用人達は優しそうな人ばかりで、は安堵の息をついた。
(よかった…)
「じゃあ早速今から着替えてもらうさっ」
パンパンと手袋をした手を叩き、ラビは言った。
黒髪の弱々しそうなメイドが、の仕事服を持ってきた。
「ありがとうございます。えっと…どこで着替えればいいんですか?」
仕事服を渡されたのは良いが、着替える場所がない。
この異性の大勢いるホールで着替える度胸があるなら別だが…
生憎自分にはそれは備わっていない。
「ミランダ手順が逆さ~、先に脱衣所に案内するさ~」
「ああっ!また間違えたわ…私ったら…」
先程のメイド、ミランダはの手から仕事服を慌て取り上げた。
「ごめんなさい、さん…」
「早く着替えて来るさ。アンタ可愛いからきっと似合うさ♪」
ラビの楽しそうな声を背後で聞きながら、はミランダの後をついて行った。