第27章 ep1 昼下がりの出会い
「俺は女が嫌いだ…」
「また言ってるんさ?」
ティーセットを片付けている赤毛の使用人は苦笑いを浮かべた。
右目を眼帯で隠した彼と同じくらいの歳の青年だ。
使用人とは思えない美しい容姿と仕草でティーセットを片付ける彼は、この屋敷の次期当主:ユウ・D・ティエドールの唯一友人と呼べる人物だ。
「その言い方、男色っ気があるみたいに聞こえるからやめるさ~」
「…この馬鹿兎っ…」
使い込まれた剣をその使用人に向ける。
けれど使用人はおどけたようにその切っ先をそっと指で弾いた。
「んな綺麗な顔してんのにもったいないさー…」
哀しそうに端正な顔を細める。
「可愛い子なんて、毛先の数ほどいるって」
と、意味不明な例えを持ち上げる。
ユウはため息をついてソファーに腰掛けた。
「もういい。さがれ…」
コイツはどうも、合わない奴だ。
この使用人といい、あの絵かきの父親といい…
ストレスやらなんやらで眩暈がする。
「少し仮眠を取る。起きるまで起こすな…」
高い天井を見上げ、目に手を乗せてつむる。
気配で使用人が息をつくのがわかった。
全く、つきたいのはこっちだというのに…
「じゃあ俺は新人の女の子に会って来るさ~」
そう言って扉が閉まる音がした。
やれやれ、
やっとゆっくり眠れる…
ただでさえあの父親との会話で精神が擦り減っていった…
夕方からは、また資料に目を通さなければいけない…
少しでも、体力を温存させておかなければ…
ユウは、ゆっくりと昼の温かさに意識を沈めていった…