第24章 らいおんハート 神田切甘裏
真夜中、が帰還したと連絡を受けると、神田は直ぐに彼女の部屋へと向かった。
「!」
彼女の部屋の入り口に立っていた探索隊を散らせ、神田は部屋の中に入る。
の姿が見当たらない。
すると、彼女の部屋に特別設置されたバスルームからシャワーの音が聞こえた。
神田が脱衣所に入ると、帰還時に着ていたのだろう黒のワンピースや下着がそこに散らばっていた。
バスルームの磨りガラスに、僅かに赤いものが映っていた。
(まさか…っ!)
神田は迷わずにバスルームに入った。
ザーッ…
タイルの床に、静かに滴るシャワーの湯に浸る少女の瞳は虚ろだった…
指先は赤く染まっていて、しなやかな裸体に赤く細い傷が幾つも見当たる事から、これは彼女が付けたものだと思われる。
けれど、彼女の胸や鎖骨辺りに傷とは全く違う赤い痣が幾つも見られた。
取り敢えず、彼女が自害していなかった事に神田は安堵の息をついた。
「…」
必要以上に刺激しないように、神田は少女を呼んだ。
少女は…はやっと神田をその瞳に映したが、突然暴れだした。
「いやあぁあ!!」
は目を見開き、痣を隠すように新たに爪を立てる。
「馬鹿やめろ!」
神田はの手を掴む。
「やめて!触らないでぇ!!」
怯えた表情の。
突っぱねる彼女は、我を忘れたように叫ぶ。
「!俺だ!」
錯乱する彼女の肩を掴み、自分を見させる。
は荒い息を整え、やっと本来の理性を取り戻す。
「…ユウ…?」
彼の正体が明らかになると、はそこから立ち上がり、バスルームを飛び出した。
突然の事に状況がやっと掴めた神田は直ぐさま彼女を追いかけた。