第20章 Time goes by 神田切裏
―――…
夜、気がつけばは…神田の部屋の前にいた。
僅かの恐さを抱いて、手が震えている。
「ユウ…私だけど…入るよ」
返事を待たずに鍵を取り出す。
以前、こんなぎこちない関係になる前に、神田に貰った合い鍵だ。
彼が微笑んでこの鍵をくれた事が懐かしくて…切なかった。
滲む涙を拭い、は室内に入っていった。
月明かりだけの殺風景な室内に、彼は確かにそこにいた。
が、
「何の用だ」
「ユウ…」
まるで他人に向けられる視線と言葉に、は胸を痛める。
神田はベッドに腰掛け、睨むようにこちらを見ていた。
は意を決したように彼に近付き、彼の前に立った。
「もう、別れよう…ユウ」
こんな改まって彼にこんな事を言ったのは、告白した時くらいだったろうか…
彼の射すような視線に、顔を上げる事ができない。
まるで心臓を鷲掴みにされるような感覚に、身体が固まる。
「今のままじゃ…もう、前みたいには戻れないよ。
ユウだって…わかってるでしょ…?」
震える唇を噛み締め、は言った。
「リセット…したいの。もう一度、友人として…片想いだった頃に戻りたいの!」
私達は長く一緒にいすぎた…
愛しすぎて、
お互いを縛り合って…
何を得たかったの?
長い時間の中で…私達は大事なものを、忘れていった気がする…
大切な、何かを…