第18章 何度も 神田切裏
カチャ…カチャ…
微かな金属音に、眠っていたは目を覚ました。
夕べの花火の音を子守唄に眠ってしまったのだろう。
そんな自分に、神田はまた律義にシーツをかけ直してくれていた。
けれど、当の本人が隣にいない。
視線を木の床を伝って前方に向けると、彼はちゃんとそこにいた。
「ユウ…」
いなくなったかと思った。
安心して、は黒いコートを着る彼を呼んだ。
神田はゆっくり振り返った。
けれどその時の彼の表情は硬く、昨夜の彼とはまた違う顔だった。
「それが、あなたの仮面の顔?」
はそれに動揺せず、尋ねた。
「…ああ、やっている仕事が仕事だ」
「そう、それを教えて…」
昨日、約束した事…
あなたが何者なのか…
「俺は…
世界に散らばったイノセンスというものを探している。
そのイノセンスを、アクマという怪物達が狙っている。
それを所持している人間も、狙われているんだ
俺は組織の上部の奴らの命令で、オーストラリアにあるイノセンスの捜索に向かった。
そしてこの街で、人間に化けたアクマに狙われていたお前に出会った」
「……」
ああ、そうだったんだ…
やっぱり…
「お前がイノセンスの所持者だと言う事は調べでわかっていた。
後はアクマよりも先に、お前の持っているイノセンスを手に入れれば…そう思って最初は近づいた。
さもないと、お前はアクマに狙われる身になり続けるから…と。
だが明くる日、お前は俺にこれをくれた…」
神田は拳に握っていたものを見せた。
それは、の予想していた通りの、赤い宝玉のついた髪紐だった。
「こんなにすぐに手に入るとは思ってなかった。
すぐにでもお前の元から去ろうとした…」
任務を遂行しようとした…
が、
「お前の笑った顔が、もっと見ていたくなった。お前の喜ぶ顔が…」
「ユウ…」
そう、だから俺はあの時任務を一時捨てて…