第18章 何度も 神田切裏
「お前を好きになった」
「……っ!」
「あの日の夜、お前を本気で本部に連れていこうとした。だが俺の任務は、教団でお前を幸せにする事じゃない。そう気付いたんだ…
苦しかった…だから、これ以上俺は誰かを傷付けない為にも、お前を…」
無理に抱こうとした。
身体だけを愛そうとした。
「けど、お前のあんな…はかない顔を見て、俺は止めた」
好きな女を、泣かせたくなかった
俺はの全てが欲しかった、だがそれは叶えられない願望で…
俺は、お前を嫌いになりたかった
「けど、お前は馬鹿だから…俺を求めてきた。愛してなくてもいいと…」
身体だけでもと…
神田はに近づき、剥き出しの肩に手を置いた。
「お前を抱く最中、俺は必死でお前を嫌いだと、見せた。
だが、この痕…」
神田の指がの鎖骨に着いた情痕に触れた。
「この痕の数…これはお前と共にしたかった未来の道の本数だ」
「…ユウ…っ!」
あなたも、未来を描いていたんだね…
「泣くな、馬鹿…」
「だってっ…ひっく…」
神田はの髪を優しく撫でた。
そう、本当に愛しそうに…
「この戦争にお前を巻き込むわけにはいかない。それは決して折れない信念だ」
不意に神田がに口付けた。
それがもう、最後のキス…
「ユウ…っ」
「お前と出会って、初めて人を好きになった」
唇を離して、の頬に手を寄せる。
「ユウっ」
「全てが終わっても、お前の事…絶対に忘れねぇ…っ」
二人は最後、
一瞬だけ…
固く抱き合った
「愛してる…」
「大好き…っ」
想い出が、蘇って来る…
まだ数日しか経ってなくて…色鮮やかで…
苦しくて…
ふらりと神田は立ち上がり、
そうして、髪紐で自身の髪をくくり…に背を向けた。
「ユウ…っ」
涙でボロボロの顔で、最後に愛する者の姿を目に焼き付けた。
彼はもう振り返らない。
それは決意の証だ…
そして彼は…
想い出を残し、想いを胸に秘め、彼女の元から去った…
「ユウ…ユウっ」
大好きだよ…っ
何度も…
何度も……っ
君の名前を呼ぶよ……っ
ユウ…っ…
何度も…
…End