第17章 恋愛写真 クロス切裏【HEAVEN番外編】
―――…
サァァ…
雨が降る。
ぽつぽつ、ぽつぽつ、と
その小さな白い粒は、街外れのこの森に歌うように降り注ぐ。
けれど、の耳にはその音が通らない。
何をしているんだろう…そう尋ねたくなった。
私は…一体…
何がしたかったの…
――…
「何をしてるんだ、馬鹿」
傘も射さずに、ぬかるんだそこに立ち尽くすの背中に向かって言った。
だが、は応えない。
「風邪を引く。…帰るぞ」
馬鹿弟子が待ってる、そう付け加えたが、反応は同じだった。
しばしの沈黙が辺りに漂った後、渇いた笑い声が響いた。
「フフ…私って、何をしても駄目みたいですね…クロス様」
は視線を落とした。
そこには土が盛ってあり、辺りにある樹の枝を使って作られた十字架が射されてある。
はその十字架に自分が身に付けていたネックレスを掛けた。
「ごめんなさい…」
は土の上に膝をつき、途絶えた命が眠る墓の前で涙を流した。