第17章 恋愛写真 クロス切裏【HEAVEN番外編】
ここには、数週間前に、が貰い受けた飛べない鳩が眠っている。
「生きている以上、弱肉強食は当たり前だ。
籠から出た時から、自分を守るものは自分しかいなかった…
そいつは自分の力で自分を守り切れなかっただけだ」
クロスは静かに言った。
「違いますっ!私が…私があの時、この子をひとりにしたから…っ!」
は涙で濡れた瞳で振り返った。
それはどんなものよりも悲痛で…美しかった。
旅先の宿で、いつものようにクロスは飲みに、アレンは資金を稼ぎに、そしては部屋であの鳩を愛でていた。
夕暮れ時に、が買い物に出掛けた隙にその部屋の窓から野良猫が入ってきたのだ。
飛べないとわかっていたので開けていた窓から…
…が帰った時、猫はもういなかった。
だが、そこで何があったのか、嫌でもわかるような惨状が広がっていた。
「あの子は…飛べないから、逃げられなかった…」
自分より強い者から
自分より大きな者から…
「私のせいで…死んでしまった…私が…」
殺した…
は持っていたナイフを握りしめた。
「死んで償う、とでも言いたいのか、お前は」
首筋に宛てる手が止まる。
「お前が死んで何になる?
あの鳥はお前に救われたんじゃないのか?」
あのまま、すぐに死んでしまう命を、が延ばさせた…
「お前が手を差し延べてやったから、そいつはこの数週間、生きて来られた」
「数週間じゃ、だめなんですっ…あの子が…立派になるまで…って、言った…のに…っ!」
はナイフを落とし、声を上げて泣いた。
「やり通すって…約束した…っのに…っ」
「失敗なんぞ山ほどあるだろ」
「駄目なんです!私はクロス様の為に…っ
クロス様の隣を歩けるような…立派な人に、なりたいのに…っ」
貴方の…ために…なりたい…っ