第17章 恋愛写真 クロス切裏【HEAVEN番外編】
「クルルル…」
「…え?」
は不思議な鳴き声にふと、横を振り向いた。
そこは鳥屋で、ほとんどが今の時代に珍しい伝書鳩のようだった。
皆、籠にも入れられずに礼儀正しく並んで首だけを左右に揺らしていた。
はそれにくぎづけになった。
否、“それら”にではない。
“それ”だ。
クロスはの様子に振り返り、彼女の視線の先を辿る。
一羽だけ…たった一羽だけ、小さな籠の中で座り込んでいた。
「あの子…」
すると、ちょうど店員がその鳩の入った籠を手に取ろうとした。
「待って!」
は駆け出した。
店員がを振り返る。
「その子…どうしたんですか?」
「ああ、コイツかい?
コイツは生れつき飛べない身体でね。伝書鳩になれなかったやつなんだよ」
店員が言うと、その鳩は切なげに鳴いた。
はそれを見て思い切って尋ねた。
「その子…どうなるんですか?」
不安が胸を過ぎる。
店員の男は苦い表情を浮かべた。
「まあ…働けないなら…しょうがないよな。売り物にもならんとなると…」
それは、つまり…
「処分って事だろ?」
クロスが歩み寄る。
その言葉を聞くと、は悲しげに俯いた。
「ま、まあ…そうなんだけど…」
男は罰の悪そうに頭を掻いた。
生きる為に動けないのなら…
(私と…同じ…)
生れつき籠の中から出られず、やりたい事も見つからない…
そんな所が、
この小さな命と同じだった…