第17章 恋愛写真 クロス切裏【HEAVEN番外編】
「クロス様が、良い夢を見られますように…」
そう呟いた。
貴方には聞こえたでしょうか…?
クロス様…
貴方はいつも突然で、強引で、でも優しくて…
そんな貴方に私は毎日胸を高鳴らせていました…
毎日が宝石のように輝いて…
私は、貴方と訪れた幾つもの場所を忘れないように、写真に収めるように焼き付けた。
今でも鮮明に思い出せます…
ーーー・・・
「クロス様っ起きて下さいっ!もう夕方ですよ?」
「…あぁん?お前はいつから俺の母親だ?」
「その台詞はもう聞き飽きましたよ、クロス様。とにかく起きて下さい!」
はクロスのベッドのシーツを剥ぎ取る。
と、クロスの腕が伸びてきて、の細い腕を掴み引き寄せた。
そして毎回と言えるように、クロスは目覚めるとと口付けを交わす。
「最初よりも動じなくなったな」
「もう、いつもの事ですから」
随分と大人びた様子のをクロスは見つける。
「…そろそろ抱いてやってもいいぞ?」
「私が泣いていたら、慰めにお願いします」
そう言って彼の腕から逃れる。
あれから二年、はクロス達と各地を転々と回っている。
途中、何回もあの船の上で見た怪物に遭遇したが、彼らは難無くそれを倒していた。
けれど、クロスは一言たりともに旅の目的も、あの怪物の事も教えてくれなかった。
にとってそれは気に掛かっていたが、彼が言いたくないのならそれでいい、と考えていた。
彼の嫌がる事は、極力したくないしする必要もない。
は益々クロスに浸っていた。
だからいつものスキンシップのような口付けも、たまに求める膝枕も…全てが嬉しかった。
クロスとの毎日が楽しくて仕方ない。
「クロス様、何かお忘れになっていません?」
彼のコートを持ってきて、は口を開いた。
まだベッドで煙草を吸っているクロスはちらりとを見た。
「あん?」
「私の20になったお祝いに、酒場へ連れて行って下さるとおっしゃいましたよね?」
「そんな事も言ったか?」
「言いました。…とにかく、服を着て下さいっ」
そう言ってコートを着させる。
彼はまだ怠そうにに、だがちゃんとベッドから身体を起こした。