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第17章 恋愛写真 クロス切裏【HEAVEN番外編】





「クロス」
「…え?」

男は脚を組んで煙草を蒸した。

「それが俺の名前だ。どこぞのお嬢様口調、お前の名前は?」

つい癖で出てしまった…

はしまった、という顔をしたがクロスの射貫くような視線にはっと我に返った。

「……です」

「その名は捨てないのか?」

「…此処に来る前に、婚約者だった方に最後、せめて自分の名は捨てないでと言われたんです。

もう逢う事はないだろうから、私も変える必要はないか、と思ったんです」

は目を伏せた。

その長い睫毛の奥にある瞳は、本当に綺麗で、クロスは黙ってその美しいものを見つめていた。

「…お前がこれから先、見るもの全部を目に焼き付けろ」

「……?」

「お前が憧れてたモン、それが全て自分が手を伸ばせば届く距離にある。それを全部、目に焼き付けろ」


出会うもの、全てを…


「…はいっ」

クロスはニヤリと笑うと、煙草の火を消してのベッドに腰を下ろした。

そして不自然に近い距離で低く囁いた。

「俺の、愛人にしてやってもいいぞ…?」

「な、なんで…っ」


先程の口付けを思い出しては反射的に身じろぐ。

が、すぐ後ろは壁であり、どのみち彼の手から逃れる事はできなかった。

はぎゅっと瞳をつむった。

嫌ではない、けれどキスも初めてだった自分にとってこの行為は刺激が強過ぎる。

「フッ…冗談だ」

「…ぇ…?」

は顔を上げてクロスを見た。

彼はの頭を乱暴に撫でると、そのまま彼女の膝に頭を寝かした。

「今でも充分美人だが、俺好みの女になるまで、もう少し待ってやる…」

「え…あの…」

「膝枕も知らねぇのか?…こうやって俺の頭置いておくだけでいい」


膝枕というのは知っているが、突然こんなに近くに異性がいると、は頭が熱くなるのを感じた。

クロスはを見ずに、ゆっくり目を閉じた。

「寝る。二時間後に起こせよ」

「あ、はい」


まだ寝てないだろうが、その顔を見せる事からして、もう自分に心を許してくれているのだろう…

にはそれが嬉しくて、気がつけばクロスの髪を撫でていた。


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