第17章 恋愛写真 クロス切裏【HEAVEN番外編】
男はを見ると、無造作に彼女の短くなった髪を梳いた。
ドキッと、の心臓が跳ねた。
何だろう…この人の顔をちゃんと見れない…
「お前は俺について来て何がしたい?」
男は口を開いた。
「自分を捨ててまで、今日逢ったばかりの俺に…何を求める?」
顔を上げれば、また不敵に笑うその表情。
もその笑みが移ったように口端を吊り上げた。
「…何もないですわ」
「…何?」
髪に絡める手を止め、男はを見つめた。
「私、貴方と一緒にいれば、きっとやりたい事を見つける事が出来て…それをやり通す事ができると思うんです」
それは嘘ではない…
彼が…
彼と出逢えた事で自分は籠から出られる事ができた…
「きっかけは、貴方だから」
「フッ…おもしろい女だ。だが、お前がついて来る理由はもう一つある」
「…え…?」
男の顔が近づいて来て、唐突に唇を重ねられる。
「ん…っ」
突然の事に、は反射的に男の胸板を押し返す。
に従い、男は唇を離した。
「お前が俺に惚れているからだ」
「何を…勝手に」
恥ずかしさと怒りが飛び交うの唇を、そっと指でなぞる。
「もっと欲しい…そんな顔をしてるがな」
「なっ…!」
は慌ててその手を払い退ける。
「名前も知らない方になんて…ありえませんわっ」
図星を突かれた事を隠すようには言った。