第17章 恋愛写真 クロス切裏【HEAVEN番外編】
正しいのか、なんてわからない
けれど私は…私の意志で動いた…
「何を言っているんだ、!」
「そうですわ!何をおかしな事を…!」
の両親が激怒して叫んだ。
は振り向き首を振った。
「いいえお父様、お母様…私、ずっと思ってた。貴族なんてものがあるから、人々は苦しむの。私は人を苦しめるお父様達のようになりたくない。
決められたシナリオで動くマリオネットなんかじゃない…!
私は自分の足で歩きたい。
この人がいるなら、それができると思うんです」
そう言って再び男を振り返った。
「だからお願いします!私には貴方が必要なんです!!」
暫く沈黙が続いた。
男の隣に立つ少年は、自分と彼の双方を見比べている。
あの白髪の少年は、男がどんな表情をしているのか知っているのだろう…
彼は何を思ってる?
いつものように、不敵に笑っているのだろうか?
船が港に到着した時、男はやっと口を開いた。
「馬鹿弟子、下りるぞ」
「……!!」
それは、自分に向けられたものではなかった。
が、
「え、でも此処はまだ目的地じゃないですよ?」
港の名前を再度確認して少年は言った。
すると男は、わざとらしく手で自分の頭を押さえた。
「…船酔いだ。三時間くらいこの港の宿で休んでからまた乗るぞ」
「は、はい!」
そして男と少年は船を降りた。
は男の背を見た。
黒い衣を纏う彼の背中は何かを語っていた。
“来れるもんなら来い”
けれど自分にはまだやるべき事がある。
自分の存在を抹消するため家に戻り、この金に貪欲な両親の手から逃れなければ。
それを果たすために自分に与えられた三時間…
急がなければ…
は駆け出した。