第16章 HEAVEN クロス切裏
美しい女だ…
クロスは思った。
容姿だけでなく、その心すべてが純粋そのものであり…
クロスはそれに、どこか淋しさを感じていた。
(その二つの瞳から、俺はどう映っている…?)
あまりに一途で、純粋な彼女。
それに比べて、自分は女の取っ替え引っ替えを繰り返す。
今までコイツを含め、抱いた女は3ケタの数に昇るだろう。
それほどまでに女に目が無く、かつ一筋という言葉は彼の脳内辞書に存在していなかった。
酒と女に溺れる自分…
二人はまるで光と影のよう…
お前と話していると、柄にもないが心洗われた気分になる…
お前はどんな俺でも受け入れてくれる…
どんなに女と遊ぼうが、は一言も俺に怒る事はなかった。
常に俺の力になるために、最善を尽くしていた…
疲れているだろうに、俺の前では明るく振る舞いやがって。
そんなお前が、初めて俺に抵抗した。
お前との別れの意味をした花束に首を振り、此処まで来た理由…
それはこの花を返しに、そして俺に告白するためだけだった…
他に何も望まない、
欲のない女だ…
俺はその様子に、正直驚き、同時に嬉しくも感じた…
「あっ…クロス様…んっ」
俺をここまで熱くさせる女は珍しかった。
俺は今、
の事しか考えられん…
この愛おしい感情は…
この感情に巡り逢えたのは、
運命、そう呼ぶのか…?