第16章 HEAVEN クロス切裏
「…」
煙の吐く音がして、クロスは口を開いた。
「今夜、お前だけを愛してやる」
「……!」
身体を離し、は驚いた様子でクロスを見上げた。
「何故ですか…?」
「あぁん?アホみたいに一途な美人を愛すのに理由なんてモンがいんのかよ?」
クロスの長い指が、自分の頬や唇を伝っていく。
「ったく…俺を探すのに夢中になって、化粧をし忘れているとは…とんだマヌケだな」
それでも、今のお前は今まで以上に美しいがな…
本当にやりたい事を見出だした者の目は、
どんな人間から見ても輝いているんだ――…
「脚も…こんなに張って…」
「ぁ…んっ…」
クロスの手が布団の中にあるのしなやかな脚に触れた。
撫でるような手つきに、自然と声が漏れる。
「俺が…癒してやる」
「…んっ…」
クロスの息がゆっくりと首筋を上がり、の唇に辿り着いた。
ゆっくりと唇が重なる。
大好きな煙草の匂いは、にとって精神安定の薬だった。
「クロス…様…んっ…」
無意識に彼の服を掴む。
クロスは優しくの頭を撫で、角度を変えて深く口付ける。
「ん…んふ…ぁ…」
ほのかにするロマネ・コンティの味…
酔っていて及んだ行為だとは、には思えなかった。
それほどまでに彼の口付けは、今まで以上に情熱的だったからだ。
舌が入ってこれば、応えるように舌を出し、彼の首に腕を巻き付ける。
「んっぁ…ふ…っ」