第16章 HEAVEN クロス切裏
そう、私はこの事を貴方に伝えにきた…
「私を愛してくれなくてもいい…
けど、貴方を愛する気持ちは、誰にも譲りません」
でも、とオルゴールを置いて、は目を伏せた。
「…この答えが出たのは、つい最近なんです。
貴方を探している間、私は何度も自分を見失いました。
もし逢えたとして、私は何がしたいのか…
何を望んでいるのか…
でも、やっと…揺らがない想いに気付く事ができました…」
はゆっくりと微笑み、そしてクロスの手を、両手でそっと包み込んだ。
「私は貴方を愛したかった。
そして…貴方が貴方らしく生きて下さる事を、私は望んでいるのです」
ずっと側で貴方を想い続ける事が出来ないのなら、
せめて貴方がもつ多くの恋人達の中で貴方を一番に想い続けます…
そして、
「クロス様が私を愛して下さらなくても、クロス様がクロス様らしく、自由に生きて下されば…は“幸せ”です」
そう、貴方の存在自体が…
私を幸せにする…
話すの表情は本当に幸せそうで、クロスは無言で彼女を抱きしめた。
「クロス様…?」
「馬鹿な女だな、お前は」
耳元で愛しい人の声が響く。
は美しく口元に弧を描き、クロスの逞しい背に手を回した。
「はい…」
煙草の匂いを愛しく感じ、は目を細めた。
クロス様…
貴方と出逢えた事、
もう一度逢えた事…
私は運命と感じてもよろしいでしょうか…