第16章 HEAVEN クロス切裏
教団の方達に彼の行方を聞いてみたけれど、やはり彼の行方は知れず、手当たり次第に聞き込みをして、彼の跡を追った。
何日も、何日も歩き続け…辿り着いた場所は…
日本の近国である、中国の港街だった。
数日前に此処に赤毛の異人がやって来たらしく、店主の女性を恋人にしたと…
「まったく…クロス様の女好きには呆れてしまうわ…」
そう自分も彼の愛人の内の一人に過ぎない。
けれど、そうやって彼に愛される事が、私は幸せだ。
「行けません。
此処から先は関係者以外お通しできません」
店から出てきた長身の女性に、中に入る事を止められる。
「離して下さい!私はクロス様に逢いに来たんです!
此処を通して!!」
抑え付けられても、は退かなかった。
それ程までに、彼を想う気持ちは彼女を前に進ませていた。
そして、その想いは上で傍観していた彼にも伝わっていた…
(まったく…いい女は一途過ぎるな…)
ついて来るな、そう言ったのに…
俺じゃお前を幸せには出来ない、そう…言ったのに…
「アニタ…悪い。
野暮用が出来た…」
いい女ってのは、俺まで、狂わせる気か?