第2章 Serenade 神田 切甘裏 【三日月の続編】
冬風がの身体を通り過ぎていく――…
現実味のあるその寒さに、は身震いして目を覚ます。
「ぅぅ…さ…む…っ」
うっすらと瞳を開けると、無機質な天井が、月光で蒼く神秘的に照らされていた。
「ん…もう、夜…?」
目を擦りながら呟くと、ある重大な事に気付いた。
「……ぇ!?」
「やっと起きたか…」
すぐ近くで神田の声が聞こえる。
見ると彼は自分に組み敷いて、勝ち誇ったような笑みを浮かべている。
「やっ…」
は慌て自分の身体を隠す。
今、自分は裸でシーツを被せられていたのだ。
したのはきっとこの青い青年。
「なんで私、裸…?」
状況が理解できない様子で、は尋ねた。
すると神田はニヤリと口端を吊り上げた。
「わかんねぇか…なら、仕方ねぇな」
神田はの頬に口付けた。
「んっ…」
寝ている間に入ってきたのか、石鹸の清潔な匂いが鼻をくすぐった。
「二ヶ月間抱けなかった分、たっぷり可愛がってやるよ…」
耳元で囁く低い声。
受話器越しに聞こえる雑音交じりの声ではない…
なにもかもが二ヶ月ぶり…
「歌ってる時みたいに、綺麗に鳴けよ」
「き、聞いてたのっ?」
ぼんやりな、と瞼にキスを落とす愛しき人をは見つめる。
「どうした…?」
黙って自分を見つめるを、神田は見つめ返す。
「夢を…見たの。
ユウが帰って来る夢…
月の綺麗な夜に、こんな風にユウは私の頭を撫でながらキスをするんだ…」
そっと、神田の自分の頭を撫でる手を取り自分のそれと重ねる。
「温かい…不思議だね…昨日、淋しかったのが嘘みたい」
涙が溢れる。
その涙さえ温かい…